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プロの料理人が読んでいる情報誌

  • 使い方一つで、料理が変わる。 いいしょうゆは、火を入れるとわかるのです。

    プロの技 拝見

    25-3-sニューヨーク(NY)の中でも”人種のるつぼ”と言われ、かつて反権力の街とも呼ばれたイースト・ビレッジ。ラフな服装の若者が行き交うストリートから一段低まったところに、メニューはおろか看板すら出していないレストランがあります。NYの居酒屋や鰻割烹、有名店「なだ万白梅」などで修行した園料理長が本格懐石の腕を振るう、2007年に開店した「饗屋」です。
    25-3-2 「渡米してこの道に入ったのですが、NYの和食は、十数年前までフュージョン料理が全盛でした。自分が納得のいく本当の日本料理を出したいと思っていた時、現オーナーのトニー好田氏と出会い、意見が一致して店を出しました」。当初は一日に十名ほどの来店でしたが、口コミなどで知られるようになりました。
    話題になったのが、炙り漬けサーモンの棒寿司。握り寿司にしなかったのは、「自分よりその道のプロにまかせるべきだ」という信念からでしたが、初めて食べる押し寿司を、ニューヨーカーたちが絶賛。人気メニューになり、NYタイムズにも取り上げられました。
    炙ったサーモンの漬け地に使われているのが、ヤマサのしょうゆ。「コクとキレのある、すっきりした味わいがいいですね。焦がしじょうゆもつくりますが、やはりヤマサ。火を入れるとわかります」。修業時代に煮方をまかされていた時、しょうゆの使い方一つで料理が変わることを学んだと言います。 懐石に用いる旬の食材の入手には、やはり苦労が多いそうです。それでも米国に来てよかったと思うのは、他の一流シェフから受ける刺激。名だたるシェフたちが来店し、園氏のレシピにすごく関心を持って聞いてくるそうです。
    25-3-3「東日本大震災のあとには、彼らとともにNYで催された復興支援のイベントに参加し、約360人前の前菜をつくりました」。困っている人には手を差し伸べる、NYはそんな街でもあるのです。
    2012年のハリケーンでは、店も大きな打撃を受けました。「水には浸かりませんでしたが、下ごしらえしていた食材を停電でほとんど失ったのです。この時はマスコミが『(被害のあった)レストランへ行こう』と呼びかけてくれました」。
    NYは、一つ信念があれば貫ける場所だ、と園氏は語ります。園氏自身、自動車会社でメカニックを6年経験してから渡米。下働きから和食の道に入り、いま高い評価を受ける料理長の言葉には、大きくうなずけるものがありました。”
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