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しゃぶしゃぶでいただく佐賀牛の紙鍋
焼き秋刀魚をのせた秋刀魚の押し鮨

ロサンゼルス空港からクルマで南へ15分。世界を代表する企業のオフィスが集まるトーランス市に、阿部孝幸氏のHiroseはあります。気候が良く、治安も比較的良い地域とあって、日本からの駐在員も多く住んでいるエリアですが、阿部氏が渡米した1969年当時は寂しい街でした。
ロサンゼルス中心部にあるリトル東京は日本食が盛況で、阿部氏はまずこちらの和食店に2年の約束で日本からやってきました。新宿歌舞伎町の割烹料理店で修行してきたとはいえ、若干21歳。しかも当時は日本からの食材のほとんどが冷凍で、米もパサパサの中粒種。そんな環境でしたが、苦にはならなかったと笑います。「あるものしかないので、それでなんとか近づけようと工夫していました。日本にいるのと同じようには決してできないのですから」。自分のできる限りで、いかに〝美味しい〟と言ってもらえるか。それはいまも考えていることだそうです。
そうした努力で〝リトル東京のキング・オブ・テンプラ〟と呼ばれるほどになり、その後トーランスの鮨バーなどを経て、2009年にHiroseを開店。握り鮨と季節の一品のあるおまかせコースで人気になりました。
しかし現地の人々にとって、鮨といえばロールSUSHI。魚は特に必要なく、スパイシーなソースをかけて食べるもの。メニューにないとわかると、「ここは鮨屋じゃない」と言って出て行く客もいたそうです。「お客様の美味しいものをお出しするのが、私たちの仕事です。ただしフュージョンSUSHIのような、私の想像を超えるものに挑戦しようとは思いません」。
自分が学んできた味と技で勝負する。その基本の一つが、ヤマサしょうゆなのだと打ち明けます。「オリーブオイルを落としたり、バルサミコソースを合わせたりもしますが、そこに使い慣れたしょうゆがあるから計算が立つのです。でなければ、とても怖くてできません」。
ヤマサのしょうゆは香りが良く、食材につやを出しやすいと話します。煮切ったり焦がしたりも、自分の感覚で覚えるのが大事。阿部氏のもとから巣立っていった料理人もみな、ヤマサしょうゆが味づくりの基本になっているそうです。

Hirose/主人 阿部孝幸 氏
そして若い人には、「これだけは絶対に負けない、という技を持ちなさい」と勧めます。「それがあれば、海外でもどこでもやっていけるんですよ」。アポロ11号が米国中を熱狂させた年から、料理の腕一つで道を拓いてきた阿部氏だからこそ、その説得力が伝わってきました。
![]() 甘海老といくらの酢の物 |
「Hirose」 |
24631 Crenshaw Blvd,♯L Torrance, CA 90505 電話:+1-310-530-3533 |
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