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注目店のキラーメニュー ENGINE

 
古き良き日本の風情薫る街・神楽坂。その路地裏に中華料理店「ENGINE」は静かに佇んでいます。2015年の開業以来、独自色のある中華料理で食通たちを魅了。そのおいしさを司るのが、「A-Jun」「うずまき」といった名店で賢才を発揮してきた松下和昌さんです。
 

 
「季節ごとの和の食材を活かした中華料理を提案したいという思いから、和の情緒がある神楽坂に出店しました。土地柄、さまざまなお客様にご来店いただいており、毎日が楽しいですよ」。名店同士が“静かに”しのぎを削る神楽坂において異端にも映る、肩の力が抜けた自然な振る舞いが印象的です。
 
料理は“以心伝心”
作り手の意志を宿すスペシャリテ

 
「ENGINE」が提供する料理は、中華料理に和の食材をふんだんに使う新機軸のスタイルです。「自分が『おいしい!』と思えるかどうかが一番の評価軸です。ただ、独りよがりな料理を出していては自己満足に過ぎません。お客様の反応を見ながら、自分とお客様が共感できるおいしさを追求しています」と松下さん。その言葉が表すとおり、温かみのある照明が灯る店内は、厨房から各座席を見渡せる設計。来店客からの感想はもちろん、言葉を介さずとも発せられるリアクションをヒントに、松下さんの探究活動は日々行われています。
 

 
そんな松下さんがおすすめする人気メニューが「黒酢の酢豚」。潔さすら感じるシンプルなスペシャリテの特長とは。「一般的な酢豚と異なるのは『タレ』。中華鍋で一気に沸かすことで、酢豚特有の刺激的な香りを適度に飛ばし、まろやかな味わいに仕上げています。」
 

 
「あと、具材は豚ロース肉と旬の食材のみ。具だくさんの酢豚があまり好みではなくて(笑)。その分、季節ごとに組み合わせる食材にはこだわり抜きます。私自身がその年・その季節に惹かれたものしか使いません」。型にはまらない発想と、真に納得できる料理を目指さんとする自我をまとうからこそ、美食家たちは「ENGINE」でしか味わえない逸品に魅了されるのです。「季節の食材に応じて味付けのベースを変えることはないので、新しい組み合わせが『黒酢の酢豚』にどんな色を添えるのか、作りながらわくわくしています」。
 

 
挑戦を楽しみ続けてきた若き名匠が
中華料理に四季の風を吹き込む

 
「ENGINE」の独創的な料理の数々には、松下さんの『四季』を愛でる姿勢が投影されています。「日本にはその季節にしか味わえない食材がたくさんあります。中華料理といえども、『和の食材』だからといって使わないのはもったいない。四季折々の食材がもつ魅力を、中華料理の技法で演出する。それが『ENGINE』のスタイルなんです」。
 

 
続けて、食材本位の調理スタイルを貫くうえで、「醤油」は欠かせないキーファクターだと松下さんは話します。「『黒酢の酢豚』には、コクとともに特有のツヤを出せる中国醤油を使っています。一方で、食材の持ち味を引き立てるほどよい塩味が私好みの『ヤマサしょうゆ』も重宝しています。さっぱりとした味付けの前菜をはじめ、チャーハンといった塩味は抑えつつ、香ばしさを高めたい料理にもぴったり。また、『ヤマサしょうゆ』を煮詰めて浮いた塩を取り除き、旨味の効いた担々麺のベースとして活用するなど、幅広いシーンで活躍しています」。
 

 
最後に、中華料理の可能性を追求し続ける松下さんに将来展望を伺いました。「私が大事にしている『料理を楽しむ精神』を若手が受け継ぎ、自分なりの中華料理を開拓してほしいです。中華料理は進化の余地がたくさん残されているジャンルだからこそ、失敗してでもチャレンジする価値があるはず。挑戦の先にお客様の笑顔、そして料理人としての悦びがあるのだから、突き進む以外ありませんね」。子どものような笑顔の奥に情熱を秘めた松下さんの流儀が、神楽坂にとどまらず日本各地で甘美なひとときを届ける未来は、すぐそこまで来ています。
 
 
中華料理の定番だからこそ鮮明に感じる
食材のポテンシャル、甘味と酸味の絶妙なバランス

 
メニュー名:黒酢の酢豚
 

 
豚ロース肉と季節の食材を組み合わせた「ENGINE」のスペシャリテ。今秋は濃厚な味わいが特長の里芋(石川芋)を使用。豚肉の旨味と酸味・コクの均整のとれた上品な味わいに、旬の恵みがその季節限りのアクセントを添えます。
 
 
①余分な脂身を取り除き、約3cm四方のサイコロ状にカットした豚ロース肉に、塩、こしょう、全卵、片栗粉、水を加えて下味をつけます。

②170℃の油で豚ロース肉を約4分、里芋は約30秒揚げます。

③中華鍋に黒酢、中国醤油、砂糖、片栗粉、水を入れて加熱し沸騰させます。そこに豚ロース肉を加えてさっと絡めます。

④皿に豚ロース肉を移し、里芋を盛り付けて完成です。

【店舗紹介】
ENGINE

 
〒162-0825
東京都新宿区神楽坂5-43-2 roji神楽坂1F
営業時間
【ランチ】11:30~L.O.13:30(火曜・木曜は休業)
【ディナー】18:00~L.O.22:00
※日曜・祝日・第3月曜定休
https://r.gnavi.co.jp/d230sd230000/
 
【松下和昌氏プロフィール】
 
1978年生まれ。調理師専門学校卒業後、北京料理の老舗「天厨菜館」や、ヌーベルシノワの先駆けとしても名高い「A-jun」で中華料理の技術と感性を磨く。その後、新たな挑戦として「うずまき」開業時に料理長として就任。約7年間にわたり一流店たる独創的な味わいを生み出し続けた後、2015年2月に「ENGINE」をオープンした。全国各地から仕入れる新鮮な和の食材を活かした繊細な味わいの中華料理の数々は、ヘルシー志向の女性をはじめ、多くの美食家たちに支持されている。