カラーメゾチントの”不思議” ―浜口陽三の色彩の魅力を探る― 2002年4月20日(土)~8月8日(木)

カラーメゾチントの"不思議"

ミュージアムトーク 展示作品より
浜口陽三によって色彩の息吹を吹き込まれた蝶やさくらんぼたち。漆黒の画面の中から、まるで自身が発光しているかのように浮かび上がるそれらは、どのように生み出されたのでしょうか。今回の特別展では浜口陽三が生み出した「色彩」に焦点をあてます。
 浜口陽三が用いた技法 “メゾチント” は他の版形式では不可能な、微妙なニュアンスを含んだ明暗の諧調を表現することができます。17世紀のヨーロッパで生まれたこの技法は、元来モノクロームの表現技法でした。パリに学んだ浜口陽三はこれを独学で習得し、モノクローム・メゾチントによる作品で1957年第4回サンパウロビエンナーレ版画大賞を受賞します。しかしその頃既に、メゾチントによるカラー表現を模索し始めており、1955年、最初のカラーメゾチント作品を生み出しています。
 浜口陽三がなぜ、モノクロームであるメゾチントの世界に色彩を持ち込んだのか… その明確な答えを作家は残していませんが、自ら創始した「カラーメゾチント」をもって、以降多くの国際美術展での受賞を重ね、世界的に高い評価を得ました。また百科事典「エンサイクロペディア・ブリタニカ」の “メゾチント” の項目には「カラーメゾチントの開拓者」として掲載され、このことを生涯誇りにしていたといいます。その方法は〈黄版〉、〈赤版〉、〈青版〉、〈黒版〉の4枚の版を重ねることで色彩を生む、現在の印刷と同じ技術です。これら4枚の版それぞれは絶妙な明暗の諧調をもち、それが重なった時浜口独自の、味わい深い豊かな色彩となるのです。
 今回の特別展示では、カラーメゾチント作品数約50点を公開すると共に、色彩についての解説資料数点を加え、浜口陽三の色彩の魅力、カラーメゾチントの不思議を探ります。また体験コーナーでは、メゾチント製作用の道具を使い、実際に銅のプレートを彫って版作りを体験することができます。

ミュージアムトーク
■5月25日(土) 14:00~15:30
真野 響子(女優)+北川 フラム(アートディレクター)
■7月13日(土) 14:00~15:30
小池 真理子(作家) + 柄澤 齊(木版画家)
※ お茶とお菓子をご用意しております。

講師プロフィール
■真野 響子 (まや・きょうこ)
東京都生まれ。テレビ、映画、舞台で活躍。93年4月より2年間NHK「日曜美術館」の司会を務める。美術に造詣が深く、「大地の芸術祭-越後妻有アートトリエンナーレ2000」では、さまざまな企画に関わる他、ボランティアとしても協力参加。昨年はNHK連続テレビドラマ小説「ちゅらさん」に出演。

■北川フラム (きたがわ・ふらむ)
1946年新潟県生まれ。アートフロントギャラリー代表。展覧会・文化イベントのプロデュースや都市・建築におけるアート計画に多数携わる。また、「大地の芸術祭-越後妻有アートトリエンナーレ2000」の総合ディレクターを務める。

■小池 真理子 (こいけ・まりこ)
東京都生まれ。85年、初のミステリー長編「あなたから逃れられない」で、心理サスペンスの新しい書き手として注目を浴びる。89年、「妻の女友達」で第43回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。95年秋に「恋」で第114回直木賞を受賞。版画に造詣が深く、「水の翼」では木口木版を題材にしている。

■柄澤 齊 (からさわ・ひとし)
1950年栃木県生まれ。日和崎尊夫氏に木口木版を学ぶ。94年プライベート・プレス梓丁室を開設。近年のグループ展として、99年「メディテーション―真昼の瞑想 ’90年代の日本の美術」(栃木県立美術館)、01年「本という美術-大正期の装幀から現代のオブジェまで」(うらわ美術館)などに出品。その他、シロタ画廊(銀座)などで個展多数開催。


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