過去の展覧会

パリの四ヵ月 銅版画家・浜口陽三と写真家・秋山庄太郎 2015年10月10日(土)~2016年1月24日(日)

人物ポートレートやライフワーク「花」をはじめ、独特の叙情的作風で写真界の第一線で活躍した秋山庄太郎(1920‒2003)。同氏は40歳の年、順風満帆だった仕事を整理し、ヨーロッパ外遊に出かける決意をします。そして1960年2月からの4ヵ月間、行く先々で風景や芸術家の肖像などをフィルムにおさめました。美しきものを写しとめる、という独自の美学に基づいた写真には一瞬のドラマがあり、被写体も風も光もまるでその1シーンのために存在するかのようです。

本展では、秋山庄太郎写真芸術館の全面的な協力を得て、残されたフィルムから、パリやヴェネチアの写真、資料など50点ほどを紹介いたします(前後期で展示替)。多くが初公開です。浜口陽三の銅版画については、秋山氏が所蔵していた中より特にお気に入りだったという「4つのさくらんぼ」を含む3点と、ヴェネチア・ビエンナーレ出品作を中心に約30点を展示いたします。

南桂子銅版画展 散歩道 2015年7月18日(土)~9月23日(水・祝)

南桂子の作品には、森や木々が繰り返し登場します。レースのような線でつづられた森、はしご状の林、音符のように実ったさくらんぼ。このような抽象を交えた形の面白さに加え、銅版画ならではの丹念な手仕事による淡い光の表現も、作品の魅力のひとつです。その光に包まれて森の情景に不思議な奥行きが生まれ、物語世界がはじまります。この展覧会は、その森の小さな葉っぱや小鳥たちが主人公です。繊細な情景の中をこころゆくまで散策し、ささやかなモチーフから物語を想像しながらご覧ください。南桂子の銅版画約50点と併せて、浜口陽三の銅版画約10点を展示します。

浜口陽三・丹阿弥丹波子の銅版画作品を、画家・詩人の大岡亜紀の詩と共に鑑賞する展覧会です。二人は表現の方向性は異なりながらも、同じ技法を用いて澄んだ境地を得た銅版画家です。銅を刻むひたむきな作業から、偽りのない光や命を生みだします。果物や花はスケッチではなく、時を重ねて生み出す心のかたち、結晶です。本展では、丹阿弥丹波子作品に貫かれる強い力を、大岡亜紀が詩に歌いあげます。

浜口陽三展 センス・モダン Sense modern 2015年1月10日(土)~3月22日(日)

「メゾチントの巨匠」と呼ばれた浜口陽三(1909-2000)は、生涯でおよそ200点にのぼる版画を制作しました。長らくパリで制作していた浜口の作品は、今なおモダンで美しく、その卓越したセンスに驚かされます。当時廃れていた銅版画メゾチント技法を独自に探求し、“目立て”に始まる手間のかかる作業を、気の遠くなるような精度、細やかさで重ねる事ができた、浜口ならではの表現と言えるでしょう。本展では、浜口の初めてのカラーメゾチント作品『うさぎ』の他、約60点を展示いたします。

20世紀半ばに世界的に活躍した芸術家・浜口陽三と、現代作家11人の展覧会です。
この国際メゾチント展は、3年前にスタートした作家主導の巡回展で、国内では作品のほとんどが初公開です。夢、風景、抽象理念など、様々なテーマを深い色味と肌合いで表現し、まるで扉をひとつくぐり抜けて、奥の世界へといざなわれるようです。メゾチントに色彩を持ち込んだ開拓者、浜口陽三の作品と共に、現代の先鋭のメゾチントを8カ国12名約60点で構成します。

●出品作家(出身国/居住国)
范敏(中国)浜西勝則(日本)ヤロスワフ・イェンドゥジェヨフスキ(ポーランド)黒柳正孝(日本)クリストファー・ノヴィツキ(アメリカ/ポーランド)ユリス・ペトラッシュケヴィチュース(ラトビア)アンッティ・ラタラハティ(フィンランド)グンタース・シェティンシュ(ラトビア)アド・ステインマン(オランダ)ユッカ・ヴァンッティネン(フィンランド/スウェーデン)マイラ・ゼネリ(アルバニア/ドイツ)
浜口 陽三 (日本/フランスとアメリカ)

南桂子展 ノスタルジア 2014年4月26日(土)~6月1日(日)

いつかどこかで見たような、なつかしくて不思議な風景――。
銅版画家、南桂子(1911-2004)の展覧会です。

本展では3 月に筑摩書房より出版される『船の旅 詩と童話と銅版画 南桂子の世界』に掲載された作品を中心に展示します。銅版画約50 点をはじめ、初公開のペン画を含む小作品、スケッチブックに残されたユニークなドローイングの数々も紹介します。洗練された銅版画と共に、創造の源泉にある南桂子の豊かな感性を発見してください。

絶対のメチエ ― 名作の条件 2014年1月25日(土)~4月20日(日)

●出品作家(50音順)
ヴォルス / エゴン・シーレ / オディロン・ルドン / 加納光於 / 川田喜久治 / 北川健次 / 駒井哲郎 / 斉藤義重 / ジャン・フォートリエ / ジョルジュ・ルオー / デイヴィッド・ホックニー / ドナルド・サルタン / 長谷川潔 / 浜口陽三 / フリードリヒ・メクセペル

メチエとは、フランス語で、「経験によって培われた熟練の技」転じて「画家や文筆家がもつ、独自の表現技巧や流儀」を意味するようになりました。

戦後、銅版画は新しい現代芸術として注目され、既存の美術にはない傑作が次々と生み出されました。本展では、そのパイオニア達の代表作を集め、揺るぎない魅力を紹介します。「絶対のメチエ」は、銅版画の探求者達が真摯に追い求めた個々人の技法や作風を表しました。

毛糸と、小鳥 浜口陽三・南桂子 銅版画二人展 【前期】 2013年8月27日(火)~10月23日(水)【後期】10月29日(火)~2014年1月13日(月祝)

浜口陽三(1909~2000)と南桂子(1911~2004)は、戦後、パリを制作の地と定め、各々の詩情を銅版画の中に込めました。

日常の静けさをモチーフにした浜口陽三。彼の考案したカラーメゾチントという銅版画の技法は、それまで誰も見たことのない、柔らかで叙情的な色彩を生みました。心穏やかな生活を思わせる毛糸や食卓の果実。刻まれた銅板から生まれた黒が無限の色合いを秘めて、柔らかな布のようにそれを包み込んでいます。彼の神秘的な作品は、20世紀後半、国際的に賞賛されました。

誰も知らない国を彷徨う南桂子のエッチングの世界は、近年になって若い世代の注目を浴び始めました。小鳥、少女、花やお城。訪ねたはずのない場所なのに不思議な既視感(と懐かしさ)を覚えます。童話も書いていた作家の、繊細なもうひとつの物語です。

長い会期の展覧会ですが、前期と後期で作品を総入れ替えいたします。二人の織り成す静かな世界を是非ごゆっくりお楽しみください。

近づくと、息づいているような静物画のうす闇。

浜口陽三(1909~2000)の銅版画は、銅板を織物のように細かく刻んで、光と闇を生み出します。20世紀半ば、新しい時代の美術表現として銅版画を選んだ浜口は、ビロードのような色彩表現を求めて独自の技法を開拓しました。指先で触れてもたどれないほど微妙な銅の彫り加減によって、作品には無限の柔らかさが生まれ、さくらんぼやレモンに永遠の時間が流れます。

本展は、半世紀以上を経た今でも新鮮な魅力をたたえる浜口の銅版画の魅力を、現代美術と組み合わせて21世紀風に紹介しようと企画しました。詩人で美術にも造詣の深い高橋睦郎氏を顧問としてお迎えし、精神性の高い繊細な作品ばかりを紹介します。

今春の展覧会では、浜口陽三の作品とともに、寄贈いただいた木版画を展示します。伊東深水(1898-1972)、川瀬巴水(1883-1957)等による、新版画と呼ばれる作品群です。
遠い異国の地で制作を続けた浜口も、東京の風俗や風景を描出した新版画の作家たちも、失われかけた伝統的な技法やテーマに新たな視点を与え、当代の表現をきりひらきました。卓上の果物、女性の微笑、夜の静けさ… 画家の眼によって切り取られた日常の一瞬が、版に刻まれ、現代の私たちの前に時を超えて現われます。


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