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【匠の皿 vol.7】「牛バラ肉ひしほ煮」 東京エアポートレストラン 取締役 総料理長 長島 博 氏

 
今回開発したオリジナルメニューは、甘辛い味付けがご飯のおかずにぴったりの一品です。「炒める」「茹でる」「煮込む」といったシンプルな調理工程がメインになるため、ご家庭でも本格的なおいしさをお楽しみいただけます。
 


 
テーマとして掲げたのは「国籍・年代を問わず楽しんでいただける日本料理」。今年開催の東京オリンピック・パラリンピックを機に、訪日する外国人は増え続けることが見込まれます。これは日本料理の魅力を世界に発信する絶好の機会。そこで、日本の食文化に親しみをもってもらえる“万国共通のおいしさ”を一皿に詰め込みました。
 

 
特筆すべきは、牛バラ肉の旨味を活かしたこってりとした味付けです。その要となるのが「醤油」。煮込むことで生まれる香ばしい香りと、砂糖と織り成す甘辛さは、世界を魅了する“日本の味”と言っても過言ではないでしょう。味付けとともに注目していただきたいのが、深みのある味わいを雄弁に語る「べっこう色」。照りのある美しい色合いは「ヤマサしょうゆ」だからこそ生まれます。食材を引き立てる塩味・香り付けだけでなく、日本料理の肝である見映えを下支えする「ヤマサしょうゆ」は、私の料理人人生においてなくてはならない存在です。
 

 
オリジナルメニューのベースとなっている「牛肉のひしほ煮」は、昔からある日本料理のひとつ。より多くの外国人に親しまれる現代的な料理に発展させるため、今回組み合わせたのが淡雪を表現した「じゃがいものソース」です。世界各国で食されているじゃがいもに生クリームのコクを加え、外国人にとって馴染みのある味わいに。繊細な昆布だし・野菜のだしが効いたゆで汁でペースト状に伸ばす際には、牛バラ肉の濃厚な味に負けないよう「もったりとした固さ」に仕上げるのがポイントです。和洋折衷のあんかけをからめて牛バラ肉をほおばれば、伝統的な日本料理に吹き込む新風を感じることでしょう。
 

 
自信作だからこそ海外の方はもちろん、日本の皆さんにも味わっていただきたい。2020年は日本の素晴らしさを世界に発信する年であり、日本人が我が国の魅力を“再認識”する良い機会になると思っています。例えば、日本の食に対する精神の尊さは、調理工程を通じて学ぶことができます。彩り野菜は栄養・色味に優れた旬の物を中心に使い、野菜それぞれに適した下ごしらえをしっかりと施してください。酢水で茹でる、あしらい漬け汁に漬けるといったひと手間から、添え物にも妥協しない日本料理の細やかさを実感できるはずです。旬の野菜が彩りを添える造形美、醤油が醸す奥深いおいしさ、異国の食文化を取り入れ発展させる飽くなき探究心。それら日本料理の“心意気”を集約した「牛バラ肉ひしほ煮」を通して、世界に誇れる食文化の素晴らしさを堪能いただければ幸いです。
 
「牛バラ肉ひしほ煮」のレシピはコチラから