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プロの料理人が読んでいる情報誌

  • 元祖親子丼から、現代の親子丼へ。 新しい味を最上のしょうゆが支えています。

    プロの技 拝見

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    開業前から注目を集め、2013年5月に一周年を迎えた東京スカイツリー。その華やかなレストランフロアに、他と趣を異にした「たまひで いちの」があります。江戸時代から250年以上続く日本橋人形町の老舗「玉ひで」が、その名を冠して初出店したお店です。これまでさまざまな再開発プロジェクトから出店依頼がありましたが、すべて断ってきたそうです。
    「玉ひでは一店舗主義。以前は本店を移転する覚悟がなければ出店できない、と考えていました」。ところが東京スカイツリーは他の都市計画と異なり、日本のランドマークとして早くから大きな話題に。「家内と娘が注目してしまい、こちらが出店話を待ち構えるような形になっていました(笑)」。
     さらに山田氏自身の「新たな親子丼を作りたい」という思いとも重なりました。「玉ひでの味は一子相伝。改良は重ねていますが、基本を変えることはできません。軍鶏鍋(すき焼き)を玉子でとじたのが元祖親子丼で、それ以外は本店では出せないのです。しかしもっと突き詰めて、『自分が作りたい親子丼』を作ってみたい。そう考えていた頃、スカイツリーの話があったのです」。

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     店名の「いちの」は、店の代表を務める愛娘・一乃さんの名です。
    「娘とは一世代限りで、という契約です。娘に子どもができても、その子たちがこの店を継ぐことはできません。これも玉ひでの一店舗主義、一子相伝の習いです」。
     本店とは違う店であることを明確にするため、鶏、玉子、しょうゆなど、食材すべてを一新しました。
    「しょうゆの香りをいかに親子丼に活かすか。それを考えて、ヤマサの『重ね仕込しょうゆ本懐石』を選びました。窒素や塩分などの構成が同じでも、最上のものは何かが違う。いちばんいいしょうゆで、いちばんいい親子丼を作ろうと思ったのです」。
     親子丼には、しょうゆの色も非常に重要だと言います。つねに同じ色が出るように微妙な調整をしているそうです。そこまでの細かい作業と研究を重ねてこそ、新しい親子丼は生まれてくるのです。

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     若い料理人へは、「基本的な料理の知識を覚えたら、人の書いたものはなるべく読まないほうがいい」という山田氏。レシピ本で真似るだけでは、その域を越えることはできません。また、作っているところを見て覚えるのではなく、食べてコピーすることを勧めます。
    「教わるのではない。自分ならもっとおいしくできると、再現していくことですね」。

    たまひで いちの/玉ひで八代目 山田 耕之亮氏

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