
風戸氏は「さかえ寿司」の代表という以外に、海外へ日本食を普及する「親善大使」でもあります。きっかけは1997年、組合の依頼でワシントンDCで開催されたイベントへ参加し、すしの基本について語ったこと。以来、海外の団体から講師として招かれる機会が増えていきました。
「他の料理と違い、すしは調理の半分が生の食品の調理衛生。その方法は完成品を見てもわかりません。だからこそ調理衛生の大切さや、知識の普及が求められるのです」と風戸氏は言います。
いまでこそフレンチやイタリアンでも生の魚介を扱いますが、それは最近のこと。「日本はその昔冷蔵庫も氷もなかった時代から、いかに生の魚をおいしく安全に食べるかに取り組んできた歴史があります」。握る前に使う〝手酢〟ひとつとっても、抗菌作用や食材を傷めない工夫があるのです。
風戸氏は、諸外国に調理衛生の知識をしっかり伝えないと「日本のすしは危険な食べ物」という誤った理解が広がりかねない危機感も覚えたそうです。そこで、2008年に『すしの基本調理と衛生』を出版。3年後にはシンガポールで同国環境省の参加を得て「すし知識海外認証制度試験」を開催しました。
「ただし」と風戸氏は続けます。「正しい知識は重要ですが、押しつけはいけません。その国の宗教や文化を尊重しながら、その違いの中で衛生に対する知識をしっかり伝えていく。いずれこのすし認証制度が、生の食を扱う〝ライセンス〟として広く認識されるといいと思っています」。
「さかえ寿司」でヤマサのしょうゆは、づけや煮物によく使います。「昔からある日本の野菜の煮物に、ヤマサはよく合います。煮物には味わいのやわらかいものがいいから。それにヤマサで煮ると色がいい。おいしいものは色合いも大切です」。
和食が世界無形文化遺産に認定され、海外で人気が高まるいま、若い人にはチャンスだと風戸氏。「調理技術はもちろん、それを言葉で説明できるよう勉強しておくこと。海外では〝なぜそうするか〟を理論的に伝える必要があります」。ふだん厨房であたり前のようにやっていることにこそ、深い理由があるのです、と語っていただきました。