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プロの料理人が読んでいる情報誌

  • 酒粕は食べなきゃソンソン!

    インタビュー

    25-2
    TV番組「小泉武夫の発酵漫遊記」(NHK)で酒粕を取り上げたら、なんと視聴率12%を記録しました。これは事件ではないでしょうか(笑)。酒粕の素晴らしさが、ようやく伝わってきたようです。

    カスといっても、アルコール度は7〜8%。決して余りものではありません。固形で手に持つことができることから、江戸時代には「手握り酒」とも呼ばれました。当時の文献に登場する「酒骨料理」も、酒粕料理のこと。〝身を食べ尽くして残るのは骨だけになる〟という、美味しさのたとえです。江戸の言葉は粋ですね。

    酒粕の魅力は、まず栄養価がとても高いこと。水に溶かして白くなるのは、酵母の塊だからです。タンパク質、ビタミン類の宝庫で、他に炭水化物、繊維、多くのミネラルなど、現代人に不足しているものを多く含みます。また、食品の保存にも利用でき、粕漬けにすれば魚の生臭さも取ってくれます。さらに、粕汁、石狩鍋、三平汁など、魚を使った鍋に白いスープが非常に良く合います。
    酒粕は奈良時代に中国から伝播し、平安時代に日本でつくり変えられました。日本酒を搾ったもので、地域差はありません。私の家は造り酒屋だったため、毎日のように朝晩粕汁を食べたものです。魚の骨など、台所にあったものを何でも入れていました。体が温まるし、肌にも良い。酒粕にはコウジ酸が入っていますから、飲む美容液とも言えるでしょう。女性には特におすすめです。

    いちばん好きな酒粕料理は、私が考案した「鮭のどぶろく鍋」。まず鮭の頭をブツ切りにし、一日とろ火で煮込みます。2日目になると軟骨が溶けるほどになるので、頭を崩さないように出したら、その鍋に粕汁、だし汁、にんじん、ごぼう、ねぎ、こんにゃくを入れて煮ます。さらに絹ごし豆腐を加え、鮭の頭を戻してひと煮立ち。酒粕の濃さ、どろどろの魚、どぶろくのような真っ白のスープ…たまりません。翌朝温め直してご飯にかけると、また格別です。ぜひお試しあれ!

    発酵学者。食文化論者 小泉武夫(こいずみたけお)/東京農業大学名誉教授、鹿児島大学客員教授。食の冒険家、味覚人飛行物体、発酵仮面等の異名を持つ農学博士。発酵文化推進機構代表。著書多数。日本経済新聞で『食あれば楽あり』連載中。

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