SP-D
本キットの特徴 / 測定原理 / 効能・効果 / 肺サーファクタントプロテイン / SP-D / SP-Dの機能 /臨床上の有用性
臨床資料 / 包装・製品コード / 参考文献

本キットの特徴
 SP-Dは肺胞U型細胞にて産生されるサーファクタント特異的蛋白質です。肺以外の臓器、細胞では産生分泌されない、極めて肺特異的な物質です。血清SP-D値は間質性肺炎によって高値となることが明かとなっており、本キットは特発性間質性肺炎、膠原病間質性肺炎など各種間質性肺炎の診断・経過観察に有用です。
 本キットの測定原理は、2種類のモノクローナル抗体を用いた、固相サンドイッチ酵素免疫測定(ELISA)法です(図1参照)。ヒトサーファクタントプロテインD(SP-D)に特異的な抗体を使用し、他の血清成分の影響を受けることなく高感度に血清中のSP-Dを測定できます。

測定原理

SP-D原理


効能・効果
血清中のサーファクタントプロテインD(SP-D)の測定

肺サーファクタントプロテイン
 肺サーファクタントは、肺胞腔において肺胞被覆層を形成して肺胞の虚脱を防止することで換気能力を維持する役割を担う生理活性物質で、肺胞U型細胞で産生、肺胞腔に分泌されるリン脂質-蛋白質複合体です 1)。その中に含まれる肺サーファクタントプロテイン(SP)は肺サーファクタントに特異的なアポ蛋白質で、サーファクタントの機能発現に重要な役割を果たしていることが明らかになっております 2)。SPとしては、親水性のSP-AとSP-D、および疎水性のSP-B、SP-Cが報告されています 3)

SP-D
 SP-Dは、4種類のSP(SP-A、B、C、D)の中で最も高い親水性を有しています。単量体は、分子量43kDaの糖蛋白でグループ VC型レクチンに属し、N末端側にコラーゲン様構造(Collagenous Domain)を、C末端側に糖鎖認識領域(Carbohydrate Recognition Domain)を有した構造をしています4)。生体内においてはコラーゲン様領域の部分で3本のポリペプチドがトリプルヘリックス構造を作ることで3量体を形成し、これらがさらに4個集合した巨大分子構造を形成します(図2) 5)

SP-D分子


SP-Dの機能
 SP-Dの機能は、大腸菌などのグラム陰性桿菌に結合したり 6)、A型インフルエンザウイルスの凝集を促進してウイルスの好中球への結合を促すことが報告されています 7)。また、細胞マクロファージに特異的に結合して 8)9)、細菌やウイルスの貪食作用を促進することからも、SP-Dは、気道-肺胞系における防御機構において重要な役割を果たしていると考えられています。特に最近SP-DがCD14に特異的に結合することが明かとなり10)、今後解明されるであろうSP-D機能について注目されています。

臨床診断上の有用性
 血清SP-Dは各種間質性肺炎で高値を取ります。特発性間質性肺炎、膠原病性間質性肺炎での陽性率は70%以上を示します(図3)11)。急性増悪時には上昇を示し、治療効果により速やかに減少します。
 間質性肺炎における感度は勿論ですが、SP-Dは極めて肺特異的な物質であり、他臓器や細胞では産生されないため、疾患特異性が高いという特徴を持ちます。例えば、膠原病性間質性肺炎において原発の膠原病の病態には影響されず、間質性肺炎が併発した場合のみ高値を示します。そのため、膠原病性間質性肺炎12)をはじめ、薬剤性間質性肺炎、放射性肺臓炎13)14)など、他疾患に併発して発症する間質性肺炎の診断には有用です。
 また、最近の知見では、治療効果が認められた症例でSP-Dが臨床像を反映して極めて速やかに減少することが報告されています15)。ステロイド治療の場合、ステロイド減量が大きな問題となりますが、血清検査で治療効果が判定できることは非常に重要なことであり、今後のさらなる応用が期待されています。

臨床資料
各種肺疾患における血清SP-D値
略号 疾患名 例数 平均 陽性率(%)
HV 健常人 282 48.9 4.3
IIP 特発性間質性肺炎 154 303.2 87.0
IPCD 膠原病性間質性肺炎 45 206.4 71.1
PAP 肺胞蛋白症 15 365.6 80.0
SAR サルコイドーシス 73 87.4 26.0
TB 肺結核 19 106.7 26.3
PN 細菌性肺炎 21 77.2 19.0
DPB びまん性汎細気管支炎 17 76.3 17.6
CPE 慢性肺気腫 17 73.3 17.6
PC 塵肺 18 121.8 55.6
BE 気管支拡張症 20 91.3 30.0
BA 気管支喘息 21 57.9 4.8

SP-D臨床


包装単位・製品コード
1キット 96テスト用
製造コード:YSE-7744

参考文献
1. Haagsman HP et al. : Annu Rev Physiol 53 : 441, 1991
2. Kuroki Y et al. : J Biol Chem 269 : 25943, 1994
3. Possmayer F : Am Rev Respir Dis 138 : 990, 1988
4. Day AJ : Biochem Soc Trans 22 : 83, 1994
5. 小笠原 由法 : The Lipid 5 : 440, 1994
6. Kuan SF et al. : J Clin Invest 90 : 97, 1992
7. Hartshorn KL et al. : J Clin Invest 94 : 311, 1994
8. Kuan SF et al. : Am J Respir Cell Mol Biol 10 : 430, 1994
9. Miyamura K et al. : Biochem J 300 : 237, 1994
10. Sano H. et al.: JBC 275 : 22442, 2000
11. 本田 泰人他 : 医学と薬学 36 : 809, 1996
12. Takahashi H et al.: Am J Respir Crit Care Med.162:258, 2000
13. Takahashi H et al.: Eur Respir J. 17 : 481, 2001
14. Sasaki R. et sl.: Int J Radiat Oncol Biol Phys 50:301, 2001
15. 大塚 満雄他 : 日呼吸会誌 39:298, 2001