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プロの料理人が読んでいる情報誌

  • 一度に数百を超す膳を仕切る。 支えるのは、「ほんまもん」のしょうゆです。

    プロの技 拝見

    waza29-01 戦国時代から交通の要衝であり、延暦寺、園城寺(三井寺)、西教寺と日本天台三総本山が揃う、滋賀県大津市。日本初の〝八景〟、近江八景もあり、多彩な魅力に溢れています。それらにほど近い、琵琶湖の穏やかな湖畔に佇む「琵琶湖グランドホテル・京近江」。昭和33年にわずか七部屋で創業し、現在ではコンベンション施設など1200人収容の規模を誇ります。金子博美副社長は「アルカリ性の泉質が美肌の湯として人気です。京都から車で約30分で来られ、平日もランチと入浴のプランに女性の団体客が絶えません」と語ってくれました。観光協会の会長として、おごと温泉を観光のハブとした地域活性化を進めているそうです。
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     ここで総調理長を務めるのは、山崎良信氏。大阪で数店舗を任された後、30代前半で18人の料理人を伴い入社。当時の関西では、料理人の移動は総入れ替えが普通だったそうです。そのうち13人が、いまも山崎氏とともに働いています。自らの原点は仲間の仕事場を維持することだ、と振り返ります。
     このホテルの名物である近江牛は、山崎氏が取り入れたもの。宿坊地を観光地に引き上げるため、上質な地元産の牛肉に着目しました。京懐石が主流だった当時は反発もありましたが、おいしい肉を求める客の志向に合いました。
     最近では、食品の偽装問題を機に自分たちで本物の食材を作ろうと、二年半をかけ宇和島でオリジナルのブランド鯛を誕生させました。その名も〝山崎鯛〟。他人のやらないことを徹底して貫き、新たな価値を生み出しています。

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     ヤマサとの出会いは、ヤマサ重ね仕込しょうゆ本懐石。「こいくちは東のしょうゆの方がコクを感じる」と思い試してみたところ、深みのある味わいに納得。近江牛の刺身しょうゆや、卓上のつけ・かけ用にも使っています。「しょうゆは合わせていましたが、自信をもって生で使える。ほんまもんのしょうゆですね」。
     大広間の宴会の際は、最大で600人分の膳を、三つの厨房で30人の料理人が手分けします。大量の食材を一定の料理にするには、調味料の調整が必須。「気候や食材によって杯数(量)を変えるので、レシピはありません。しょうゆは生きものなのです」。
     16歳のとき、裸一貫で料理の世界へ入った山崎氏。頑固者ほど、進む道を見つけられれば誰にも負けないと言います。「どんな人間にもチャンスは三、四回あります。それに気がつき、逃げずに前へ進むことが大切ですね」。

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    総調理長 山崎良信氏
    日本調理師連合会理事、包丁道清和四条流名誉師範

    副社長 金子博美氏
    おごと温泉観光協会会長

    「琵琶湖グランドホテル・京近江」

    滋賀県大津市雄琴6-5-1
    電話:077-579-2111

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