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プロの料理人が読んでいる情報誌

  • だしが命なら、しょうゆは手足。どう活かすかは料理人の腕次第です。

    プロの技 拝見

    pro-30-7 いまも昔も札幌をにぎやかに彩る街、すすきの。その中心から南へ5分ほど歩いた鴨々川のほとりに、和の趣あふれる佇まいの「川甚本店」があります。昭和20年創業、札幌に残る唯一の本格料亭と言われ、国内はもとより各国の要人が訪れます。

     平成18年、30代半ばで料理長を任された本間勇司氏は、道内の大会をはじめ全国コンクールで1位になるなど数々の受賞歴があります。本間氏は中学卒業と同時に、旭川の寿司店で住み込みの厳しい修行に堪えた後、東京の和食店で3年ほど経験を積み、再び北海道へ戻りました。

     ホテルの厨房に落ち着いた頃、結婚を機に、次第に焦りを感じるようになったと言います。「同世代と比べて、私には技術も社会常識もないと思いました」。そこでホテルの営業が終わると一流の料理人のもとへ通い、教えを乞うようになりました。休日は知人の店で厨房を手伝いながら腕を磨き、夜中に料理書を読み漁るなど、睡眠は1時間の日々。体力があり、スタッフや周囲のサポートに恵まれたおかげで続けられました。

    pro-30-4 そして25歳の時、「川甚本店」の先代料理長との出会いがありました。道内の料理大会に何度出ても賞が取れず、腑に落ちずに理由を聞きに行った先が、審査委員長である先代。「審査員全員をうならせてみなさい」という言葉に5分で納得して帰ってきたそうです。

     ヤマサしょうゆとの出会いは最初の旭川の寿司店でした。駆け出しの頃はむらさきのだしの割合で怒られ、煮炊きでしょうゆを焦がして怒られ、しょうゆの蓋を閉め忘れて怒られました。「こっぴどくやられたのを体が覚えています(笑)」。だしが日本料理の命なら、しょうゆは手足というべき大切なもの。「しょうゆを変えたら、レシピをすべて変えなくてはなりません」。新しいしょうゆを試す際には赤ワインのグラスで試飲するそうですが、選んでいくといつも残るのがヤマサ。香りがよく、煮炊きしてもカドが立たないと言います。料理との初めての出会いから、和食に新しい工夫を凝らすいまに至るまで、その信頼は揺るぎません。

    pro-30-4 若い人には「頭を使いなさい。勉強しない人間は落ちて行く」と言い切ります。「川甚本店」の伝統を受け継ぎ、味を守りながら、さらに時代に合う料理と新しい風を取り入れるため、いまも睡眠3時間で勉強を欠かさない本間氏。「和食文化を伝えられる最後の砦」という考えから、最近では札幌の学校給食など食育の分野にも深く貢献しています。

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    さっぽろ川甚本店料理長
    本間 勇司 氏
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